松文館裁判第一審判決


(2002年10月5日発端,2004年1月13日判決)
2004年9月1日更新

2004年1月13日
足掛け2年,実質1年と3ヶ月に及ぶ戦いに一応の終止符が打たれました。

判決は 求刑通り被告(松文館社長)は懲役一年、執行猶予三年の有罪
とうとう,エロ漫画を描くことが猥褻罪になる時代が到来しました……

0.裁判官の論

主な判決内容は Center Of Universe サイトの傍聴録 児ポ法改悪阻止青環法粉砕実行委松文館裁判の コンテンツで紹介されています。

1.またもやスケープゴートにされた漫画(2004年1月14日掲載)

 判決の内容についてですが,またもや漫画文化はスケープゴートにされているようです。

 というのも,判決内容について,裁判中に東京都立大学人文学部助教授 宮台真司氏が言われていた, 『表現の影響に科学的根拠はない』という証言に対して,逆に近年、青少年の性犯罪は減っていると言うが、 成年も含めると全く逆で昭和61年の2682人、平成7年5744件、平成14年には1万3千件までに激増している。 つまり,性表現の氾濫とこの傾向は容易に推測でき、抑えることは緊急課題であるとのこと。

 エロ漫画やAVだけで犯罪件数がこんなに増えるでしょうか?

 確かに,犯罪を起こす要素に絶対ならないとは言い切れませんが,かといって漫画やビデオで7年程で2倍になるというのはちょっと考えられません。 気になるのが,『成年』という表現ですが,年齢的にどの程度までが範囲になるのでしょうか?
 ただ,現時点でもはっきりいえるのは,犯罪が起きる要因がそんなに簡単ではないということでしょう。
 犯罪は,たった一つの要因だけではなく,社会・経済動向などに影響を受けたり,会社・家庭などによるストレスなども十分な性犯罪を 引き起こす要素になりうるといえるでしょう。

 事実,近年増加傾向が著しいの教師による性犯罪(しかも年配)など,今回の争点となるエロ漫画と関連性が見えません。 結局,1つの統計データを見て詳しい事実確認なども行わず,短絡的に導き出した解ではないのでしょうか? 実際,エロ漫画などによる影響に関しては,その因果関係を証明する信頼性の高いデータがないのは周知の事実でしょう。

 これは,裁判官個人の意見であって裁判の判決としては明らかにおかしいものでしょう。 まして,今回は史上初猥褻罪による漫画の刑事告発という側面を持っているわけです。 後のことを考えれば,慎重をどれだけ重ねても過ぎるということはないといっても過言ではないでしょう。  しかし,このちょっと知識をもっている人間であれば容易に分かる,明らかなスケープゴートです。 物事の原因を一つに絞ることでとりあえず事態の収拾をつけようとする印象を受けます。
ただ,過程をみてこの結論は不甲斐ない検察に裁判官が助け舟を出したとも推測してしまうそうなぐらい判決にいたるまでの公判を無視したものです。
 ある小説で語られていたことがあるのですが,『人は真実を信じるのではなく,人が信じるものが真実となる。 人は信じたいことしか真実と認めない』という言葉を私は思い出します。

 これが裁判官にとって信じたい真実≒正義だとしたら,人間としては良くても,法の番人として失格 と言わざるを得ないでしょう。

2.時代に逆行する法解釈

 今回の判決において,参考とされた判例は1957年(最高裁昭和32年3月13日判決)の 「チャタレー夫人の恋人」事件判決,1979年 (東京高裁昭和54年3月20日判決)の「四畳半襖の下張」事件判決 がメインのようです。

私が生まれる前の話を言われてもさっぱりわかりません

 日々代わり続ける倫理観・モラルの中で,現在より25年も前の判決を元に堂々といわれても全く納得がいきません。 実際,当時問題となった『チャタレイ夫人の恋人』という書籍は,現在の価値観なら猥褻図書という 判断はまずされないだろうといわれています。後述の『四畳半襖の下張』についても同様のことが言えるようです。

 結論,もう社会通念上で通じない古くなった価値観・法観によって現在の猥褻図書という判断をしている,つまり時代錯誤ではないのでしょうか?

 判例の中で,『一般の常識人の判断において』といっておきながら,裁判官としての法的判断の根拠は,時代遅れとなった価値観。

 確かに,法律は時代や世情に流されてはいけない部分はあります。しかし,現代では『チャタレイ夫人の恋人』以上に性表現に富んだ作品が 一般の流通を通っている以上,当時の判決の意味は有名無実となっているのではないのでしょうか?

結論,今回の裁判官は時代に逆行した判断といわざるを得ないと思います。

 私個人としては,有罪・無罪の判断云々以前に,日本が誇る漫画文化のある意味暗部についての初めての論争に決着を着けるに 相応しく,且つ現代を反映した新しい判断基準となる判決を期待したのですが…………悪い意味で期待が裏切られました。

3.あなたは法の番人ですか?警察の支援者ですか?

 今回の判決文を読んでいて一番カチンときた部分は, 警察の捜査・取り調べ・判断に関する部分でした。 判決文曰く(AMIメーリングリストより転載させていただきました)<

 その作者の別の漫画作品及び別の漫画家の漫画作品をそれぞれ回覧し、東京地方検察 庁風紀係担当の検察官並びに有識者である刑法学者及び弁護士の意見を聞いた上、 本件漫画本がわいせつ図画に当たると判断して立件したものと認められるのであり、 このような強制捜査着手に至る過程にも、何らかの違法があったことを疑わせるような 証跡は全く認められない

 読んだ感想

いやいや冗談は顔だけにしてくださいよ

<今回の事件における警察の怪しいポイント
 T.任意同行から逮捕までの過程の不透明さ
 U.法律で認められている,逮捕者の調書の書き直し要求を認めなかった警察
 V.法律的根拠も無く延びた拘留期間
 W.文書などで一切残っていない,警察が根拠とする形無き『有識者の意見』

 てなわけで,証跡が無いってどの口で言ってる爺!お前の目は節穴かド阿呆!などと叫びたくなるほどツッコミどころ満載の意見に唖然とするばかりです。
 特に,今回の逮捕における捜査記録の不備は誰も眼から見ても杜撰(ずさん)であるというのに, 『証跡は全く認めら無い』と言い切られています。 冗談抜きで裁判官の目を疑わざるを得ない状況です。
 裁判の進む過程における,弁護側の論拠ある論理に対する警察・検察側の論拠の薄い論理。
 まるでこの裁判は,台本がないのに結末だけ決まっていた劇のようです。

  但し,性質の悪いことにこれはリアルドラマなのですよねぇ……

4.裁判官とは何ぞや?

 更に,驚いたポイントは2つあります。

 1つ目は園田氏(大阪市で不健全図書指定をされている)に対する反論の部分です。
判決文の中で園田氏の意見を,『いつもエロ本ばかり見ているから,貴方の感覚は麻痺している』というニュアンスを込めた意見で退けている部分
がありました。

これは,園田氏だけでなく大阪の不健全図書指定に当たっている組織そのものを侮辱・否定するに等しい意見 ではないのでしょうか?
 更に,それに関連して『本件漫画本と同様の漫画本等が流通していることを承知していながら、あえて摘発せず放任していたなどとは 到底認められないのである』といっている部分においても,園田氏が裁判中で言っていた,不健全図書指定をする指示を出しても 明らかに無視をしている現状からも,警察の捜査に関しての見逃しは人員不足だけでは無いように思われます。

 2つ目は,判決文の中で,要約すると『裁判における社会通念とは一般民衆の考え方より 高い部分の存在するものであり,裁判所に委ねられた法的解釈によって判断されるべきもので,一般民衆による反対意見で 動く筋合いの無い価値観である』といっている部分です。

 確かに,わが国において司法は行政や立法から独立して存在している, 三権分立というシステムで成り立っているわけですが,国民から分離・独立するものではないはずです。
 筋合いが無いと言っている裁判官の意見自体が,筋合いがないと言うべきでしょう。

 確かに,アメリカのように国民感情・世情に左右されやす過ぎる司法システムも問題ですが,逆に国民感情を全く無視した司法システムも問題です。

今回の判決は法律が一人歩きするような状況ではないのでしょうか?

5.結論

 結局,今回の裁判は,警察の怪しい証拠(調書)は認められるは,裁判官の独善的な意見が判決文の中で いきなり登場するはで無茶苦茶でした。
 私自身,このように裁判というものに真正面から向き合ったのは初めての所為か,勝手はわからぬところはありましたが, このような結果になったは非常に残念としか言い様がありません。

 高裁において裁判の差し戻し若しくは,弁護側の勝利という結果が出ることを切に願うばかりです。

 しかし,今回の事件の根本を見れば,ただ『好奇心でエロ本を買った未成年とそれについて怒った父親』いう とても普通なことだったような気がするのですがね…………

 後,今回の裁判に憤るのはわかるのですが,裁判官の顔写真をHPで晒し者にする輩については賛同しかねます。 憤りを免罪符にして肖像権の侵害をするのはどうかと思うのです。  大人の喧嘩は冷静に論理によって決着が着けられるべきものであり,そのようなやり方は子供のやり方としか私には思えません。
どれだけ相手に非があろうとも,それを起点に自らが犯罪を犯して良い道理は日本には無いのですから。 それに,このようなやり方は逆に,相手につけ込まれる隙を作るだけではないのでしょうか?

(WRITTEN BY 帆葉 佳一)

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